企業にとって新規事業が必要な理由
1. 変化し続ける市場ニーズに対応するために
「企業にとって新規事業は永遠のテーマです」と、言葉でいうのは簡単ですが、なぜ企業が新規事業に取り組み続ける必要があるのか、まずはここをあらためて考えることから始めましょう。
市場のニーズは常に変化し続けており、それだけ製品のサイクルも短くなってきています。その背景には、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、クラウドサービス、サブスクリプションモデル、あるいは5G(第5世代移動通信システム)など、新しい技術やサービスの登場・普及によって消費者のニーズが目まぐるしく多様化していることが挙げられます。
ニーズの変遷サイクルが短期化している現代社会では、たとえ既存事業が順調であっても、安穏としてはいられません。「現状のままで十分安定経営ができているから、あえて新しいことに挑戦しなくてもいいだろう」とは言っていられないのです。いつ自社製品が飽きられるかわからない、ベンチャー企業が急速に競合事業で伸びてくるかもしれないといった脅威と常に隣り合わせであることが、リアルな現実です。
すでに顕在化しているニーズだけでなく、潜在的なニーズも視野に入れながら、長期的にニーズをとらえていくことが必要不可欠になります。高度な情報社会の中で自社の強みを生かしたビジネスで市場を開拓し、持続的に成長していくことが大切なのです。
企業を取り巻く環境や世の中の景気、消費者の動向は刻々と変わっています。企業が新規事業に挑戦し続ける理由、それは生き残っていくためです。持続的に成長していくには、新規事業が欠かせないと言っても過言ではないのです。
2. 新規事業の成功率は低いという現実
では、どんどん新規事業に取り組めばよいのかというと、残念ながら世の中はそんなに甘くはありません。新規事業の成功率は、10%未満といわれています。つまり10回チャレンジしても、1回成功するかどうかという厳しい状況です。また、ビジネスの世界には「千三つ(1000件の新規事業に対して、うまくいくのは3件)」という言い方もあります。こうした高い壁を超えようとして、企業は懸命に試行錯誤を繰り返しているのです。
新規事業が成功するかどうか、結果を事前に知ることはできません。しかし、さまざまな準備をしておくことで成功の確率を上げることは可能です。そのいくつかを挙げてみましょう。
- 情報収集を積極的に行う
- 多様な意見に耳を傾ける(ダイバーシティの重視)
- 外部コンサルの活用も選択肢として検討する
これらはすべて、いかに多くの着想・ヒントを得られるかを念頭に置いたものです。旧来の常識や習慣にしばられることなく、視野を広げ、頭を柔らかくしてアイデアを考えることが大切なのです。
3. 新規事業の成否を分けるポイント
新規事業を成功に導くためには、いくつか押さえておかなければならないポイントがあります。ここでは、3つの視点から紹介します。
ターゲットを明確にする
最初のポイントは、ターゲットの明確化です。これは新規事業に限らず、ビジネス全般においていえることです。近年は、単に「女性層」や「シニア層」と大まかに設定するのではなく、より具体的にターゲットを絞り込むことが重要になってきています。
ターゲットを細かく決めることを、マーケティング用語では「ペルソナを設定する」といいます。そこでは、年齢、性別、職業、趣味、年収、さらには家族構成やライフスタイルまで、あたかもその人物が実在するかのごとく細かくユーザー像を設定します。そのうえで製品を設計したり、戦略を組み立てたりしていくという手法がとられます。
スピード感をもって取り組む
次に大切なのが、スピード感です。組織が大きいほど意思決定が遅くなってしまいがちですが、新規事業には「スピードとの勝負」というようなところがあります。
まずはそのアイデアを世の中に出して、反応をうかがってみる。そのような「スモールスタート(小さくスタートすること)」から始めるのも一つの方法です。その後、市場からのフィードバックをスピーディに検証し、改善しながらよりよいものへとブラッシュアップしていく、というふうにPDCA(計画・実行・評価・改善)を回していくことが大事なのです。
優秀な人材を育てる
ある意味、最も重要といえるポイントが「人材育成」です。「新規事業と人材育成はまったく別ものでは」と思われるかもしれませんが、実のところこの両者は表裏一体の関係にあります。成功している企業の中には、新規事業の目的を明確に人材育成と位置づけているケースも多く見受けられます。
新規事業では、基本的にゼロベースから事業を立ち上げるプロセスを経験することで、社員が実践的にスキルを磨くことができます。あるいは、チームでビジョンを共有する中で、自分の役割を理解しながら行動することもできます。そうした「場づくり」がよい人材を育て、よい事業を育てます。
よい事業が育てば、よい人が集まってきます。こうしたサイクルを構築することが、企業の安定経営(持続的な成長)にとって欠かせないのです。
4. 失敗するときの共通パターン
新規事業が失敗してしまうケースには、共通するパターンが見られます。それは、先に挙げた3つのポイントとも大きくかかわっています。
ニーズをとらえきれていない
ニーズをとらえていないということは、要するにターゲットが明確になっていないということです。楽観的な需要予測に基づいた事業計画は、軌道に乗れないときにまったく打開策を見出すことができません。
仮説立案・検証が遅い
これは、意思決定が遅いということにほかなりません。大企業ほどその傾向があることは先にも触れましたが、あまり慎重になり過ぎると市場で出遅れてしまい、大きなビジネスチャンスを逃すことになります。
ヒューマンリソースの不足
「人手が足りないから新規事業に回せない」と二の足を踏むケースも少なくありませんが、それは採用が難しいというだけでなく、人材育成に関しても何かしら問題があるはずです。人が育つ環境づくりを実現するにはどうすればいいか、会社として今一度真剣に考える必要があります。社員を単なる労働力ではなく、ヒューマンリソース(人的資源)としてとらえているかどうか、企業姿勢が問われます。
5. DX化は新規事業のプラットフォーム
冒頭で、「長期的にニーズをとらえることが必要不可欠」ということを述べましたが、そのためには市場ニーズを正しく把握し続けられる組織づくりができていることが前提条件となります。今や、その組織づくりの重要なカギをにぎっているのがデジタル化です。デジタル化が的確かつスムーズにできているかどうかは、新規事業の今後を左右する大きなファクターとなります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉は、すでに多くの方がご存じだと思います。2004年ウメオ大学(スウェーデン)のエリック・ストルターマン教授が提唱した概念で、その内容は「進化し続けるテクノロジーが、人々の生活を豊かにしていく」というものです。
ビジネスの世界でもさまざまな企業・組織がDXに取り組んでいます。しかし、言葉の浸透度に比べて本当の意味でDX化が進んでいるかというと、現実にはそうとはいえないケースが散見されます。中には、DX化とIT化をほぼ同義ととらえている方も多いのではないでしょうか。
では、DXとは何か。経済産業省が2018年に発表した作成した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)」では、DXは以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
つまり、事業を展開するうえでの重要な「手段」がDXであるという位置づけです。今後、デジタルのデータや技術を活用せずに新規事業を立ち上げるということは、まずないでしょう。そう考えると、新規事業のプラットフォームこそがDX化である、といっても過言ではありません。
DX化への道のりはBPRから
1. 土台をしっかり固めておく
新規事業が企業にとって重要であることはよくわかった、またこれからの時代、新規事業とDXが切っても切れない関係にあるということも理解できた。では、会社から新規事業開発を任された担当者(部門)としては、どのようなことから着手すればよいのか、この段階ではまだ具体的にイメージできない人も多いでしょう。
そこでおすすめしたいのが、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)から始めるという「急がば回れ」方式の戦略です。BPRは日本語では「業務改革」と呼ばれます。既存の社内制度を抜本的に見直し、業務フォローや管理の方法、情報システムなどを刷新または再構築することを意味します。
「新規事業なのに社内改革?」と思われるかもしれませんが、先ほども触れたように、市場ニーズを正しく反映し続けるための組織づくりができている必要があります。いわば、土台を強固にしておかなければ、その上にどんな構造物も建てることはできないというイメージです。
では、どのようなものがBPRなのか、具体例をいくつか挙げてみましょう。
- 正社員が行っていることを、派遣社員ができるようにする。
- 人力で行っている作業を、RPA(※1)で行うようにする。
- コールセンター業務をチャットボット(※2)に切り替える。
このように業務設計をし直したり、役割分担を見直したりすることで、業務プロセスを効率化・簡略化するのがBPRの役割です。それはDX化と密接にかかわっており、デジタル技術を用いたBPRはDXの一環であると考えて差し支えありません。先に挙げた例でいえば、2つ目と3つ目がそれに当たります。
つまり、BPRに取り組むことはDX化への道のりであり、DXに取り組むことは新規事業への第一歩ということになります。
※1 「Robotic Process Automation」の略。人の代わりに業務をこなす自動化ツールのこと。
※2 「Chat」と「Bot」を組み合わせた言葉で、自動会話プログラムのこと。問い合わせに自動的に対応するなど、ユーザーと企業を結び付けるコミュニケーションツール。
2. BPRで事業開発スキルを強化
新規事業ですぐによい結果を出すことは至難の業ですが、BPRは比較的短期で一定の成果を出すことができます。どんな会社でも「業務を効率化したい」というニーズは多かれ少なかれあるはずです。それを最新技術で解決するのですから、必ず結果が伴います。
コールセンター業務を例にとると、かつて顧客情報はすべて手書きによる紙ベースで管理されていましたが、これがシステムの導入によってデジタル化され、さらにメールや問い合わせフォームを活用することで効率化が進みました。今では、音声対応ロボットなどによってコールセンターのあり方自体が大きく変わりつつあります。技術の進歩にあわせたBPR施策が、事業に変革をもたらしてきたのです。
こうして、まずは1~2年程度の短期で社内おけるコスト削減を実現したうえで、その分を新たなビジネスにおける投資に回すというやり方が、新規事業を立ち上げる際にはスマートかもしれません。そうする方が、経営層にとっても納得感があるでしょう。
また、BPRに取り組むことには、もう一つの大きなメリットがあります。それは、BPRでの成功体験が、新規事業に必要なスキルを磨くことに役立つということです。
- デジタル技術に関する知見が高まる
- 変革を推進する力が身につく
- 仮説立案・検証能力が磨かれる
こうしたことが、BPR施策を通して新規事業部門のメンバーには蓄積されていきます。新規事業とBPRが異なるのは、「社内を相手にするか」「社外(顧客)を相手にするか」という点です。「新しいことに取り組む」「潜在的なニーズに応える」という意味では、それほど大きな違いはありません。
成功の秘訣は「続けること」
1. 数年で結果を出すことの難しさ
新規事業が具体的なカタチになるまでには、どのようなステップを踏むのでしょうか。それはざっくりいえば、「アイデア出し」と「実行・具現化」の2段階に分けられます。さらに細かく分けると、以下のようになります。製品開発を例にとって整理してみましょう。
〈アイデア出し〉
①アイデアを複数案考える
②アイデアを絞り込むためにヒアリング調査を行う
③アイデアの製品化に向けて経営の承認を得る
〈実行・具現化〉
④製品化スタート(試作品のチェック後、量産へ)
⑤営業活動スタート
⑥市場からのフィードバックで評価・改善へ
書き出してみると簡単なようですが、現実として①~⑥まで話が進むには、どれだけの時間を要するのでしょうか。
仮に2~3年かかるとします。この間は当然利益が出ませんが、「新規事業に初期投資は付きものだから仕方がない」と経営層は考えます。しかし、いざ市場に出してみると、当初思い描いていたほどの手応えがない。そこで検証や改善が続けられることになり、気がつけば4年、5年…と時が過ぎていきます。
それにつれて新規事業部門に対する風向きが徐々に変わってきます。「いつ成果が出るのか」「これ以上投資が必要なのか」。そうした意見が主流を占めるようになると、その事業計画はいつ見切りがつけられてもおかしくない状況になります。
最初からうまくはいかなくても、時間をかければよい事業に育ったかもしれないせっかくのアイデアが、存続困難によって潰えてしまいます。
2. 長く続く仕組みを作る
新規事業の頓挫には、経営層の「不確実な状況が続くことへのイライラ」が大きく影響しています。企業にしてみれば、予測可能な施策を計画通りに進める方が安全です。それゆえに新規事業部門が立ち上がっては消え、消えてはまた立ち上がり…というようなことが3~5年周期で起きてしまいます。
もし、みなさんの会社に長く続いている新規事業部門が存在しないとしたら、それはこのような事情が過去において繰り返されてきたからかもしれません。新規事業を軌道に乗せるには、通常5~10年はかかります。それを毎回5年以内で反故にしていては、そもそも大きな成果を期待することはできません。
あなたが新規事業部門のリーダーなら、そこにメスを入れることも重要な仕事の一つになるでしょう。そのためには、先に述べた「BPRから始めて、その実績を経営層との交渉材料にする」というのも有効な方法です。
また、メンバーが総出で一つだけの新規事業にかかわるというやり方も、リスクが一極集中するので改めるべきです。
- たくさんのアイデアを同時多発的に検証する
- 一つひとつのアイデア検証に極力コストをかけない
このような活動こそが、新規事業部門のあるべき姿だと思われます。存続さえできれば、あとは勝つまでやればいい。成功に近道はありません、成功するまで続けることが成功の秘訣です。そしてそれを組織全体に啓蒙するのも、新規事業部門の役割です。
Amazonを創業したジェフ・ベゾス氏も、開業当時の4~5年では利益を上げることはできないと予測していました。その緩やかな成長速度に対して、株主からは「もっと速く採算性を確保しなければ株主の投資を正当化することはできず、長期的には生き残ることすらできないだろう」という不満の声が上がりました。しかし結局「勝った」のがどちらであるかは、言うまでもありません。
「アイデア出し」は海外事例を参考に
1. 「とりあえずやってみる」は正しいか
スタートアップの世界ではよく、アイデアよりも実行が重要といわれます。アイデア段階で悩むより「とりあえずやってみる」精神が大事というわけです。しかし、すでに安定経営を続けている企業では、安易に「とりあえず」を連発するわけにもいきません。関係各署や外部会社との連携も多く、慎重になってしまうのは当然です。大企業とベンチャー企業では置かれている状況が違います。そのことを踏まえて、アイデアも実行も同じぐらい重要と認識するところから始めましょう。
とはいえ、アイデアも何でもいいから出せばいいというわけではなく、それが検証に値するものかどうか、精度が問われます。アイデア出しにおいて留意したいのは、以下のような視点です。
- ある程度の事業規模になりそうか
- 自社の優位性が生かせそうか
- 技術的に実現可能なものか
こうして、できるだけたくさんの良質なアイデアを出すことが大事です。
しかし、実際には良質なアイデアがそう次から次へと浮かぶものではありません。そこで、先にも述べたように、情報収集を積極的に行うなどのウォーミングアップが欠かせません。その情報収集をする際に参考になるのが、海外の事例です。
海外ですでに成果を上げている事業アイデアに触れることで、「このようにアレンジしてみてはどうだろう」という発想がわきます。日本語にも「換骨奪胎」という言葉がありますが、まさに着想・形式を参照しながら、独自の価値あるものを構築していくのです。
- 日本でも類似のことができないか
- 同じ概念をほかのテーマに応用できないか
- 自社のリソースを使ってもっと効率的に実現できないか
これはと思う事例があれば、上記のように考えてみてください。例えば、「家畜にウェアラブルデバイス(※3)をつけて体調管理をすることで管理業務を効率化する」というアイデアがあったとします。そこから、自社の技術でもこれができるのではないか、家畜ではなく養殖魚に対しても同じことができるのではないか、などと自身に問いかけ、思考を巡らせていくことで、アイデアのブラッシュアップやカスタマイズにつながります。
※3 腕、頭部など、身体の一部に装着可能なコンピュータのこと。ウェアラブルは「身に付けられる」の意。
2. 海外事例に学ぶ「タイムマシン経営」
海外の事例を参考にしたアイデアは、経営層へのプレゼンテーションにおいても説得力を発揮します。プレゼンでは、それに取り組むことに成算はあるのか、当然のようにエビデンスを求められます。個人の感想レベルの「見込み」や、具体性のない精神論的な説明に終始すると、なかなか理解を得られません。
スタートアップの場合、リスクを負うのは原則として一人ですから、思いつきレベルの話であっても説明責任はないでしょう。しかし組織が大きくなると、経営層やその向こうには多くの株主もいて、説明責任を果たさないわけにはいきません。しっかりした説得材料を持ってプレゼンに臨み、みなに納得してもらったうえで取り組む必要があります。
「タイムマシン経営」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。世界のどこかで成功したビジネスモデルを、日本の市場でも展開する手法のことで、ソフトバンク創業者の孫正義氏が命名したとされています。まるでタイムマシンに乗って未来からやってきたかのごとくビジネスを展開し、成功へ導くというわけです。
例えば、QRコード決済のケースを考えてみましょう。中国の大手IT企業アリババグループがQRコード決済機能「Alipay」の提供を正式に開始したのは、2011年のことでした。これは、偽札などが出回り、現金の信憑性が低くなっていた中国の社会的な背景の中で、爆発的に広まったサービスです。一方、日本では現金の信憑性が高く、クレジットカード決済や交通系ICカード決済などのデジタル決済も普及していたため、他国の動きにそれほど関心が向いていませんでした。しかし2018年秋に「PayPay」が正式にリリースされると、強力なマーケティング活動の後押しもあり、一気に広がりを見せました。これなどは、タイムマシン経営の顕著な事例の一つです。
実際、日本で急成長しているベンチャー企業の多くが、タイムマシン経営を行っています。海外の事例は、まさに着想やヒントの宝庫。まだ見ぬ原石を発見して、それを磨き上げていく喜びは、新規事業担当者ならではの醍醐味です。
仮説を検証するために大事なこと
1. 時流に合っているか
良質なアイデアは、さらに検証する価値のある「仮説」へと精度を高めていきます。そしてその仮説が、新規事業として取り組むべきものかどうか、真剣に見極めることが次のステップとなります。
まず見定めなければならないのは、タイミングです。そのためには、世界の潮流を把握することから始めましょう。例えば「Uber」などのように、新しい試みはアメリカから始まるのが近年の傾向です。そうした成功事例は、世界で類似のビジネスを生み、それぞれの地域事情に合わせて最適化されていきます。こうして、だいたい3~5年の間にコピービジネスは世界に広まります。
海外事情からアイデアを得て、仮説へとブラッシュアップし、実行・具現化へと推し進めていくにあたって、世界の先行事例と相対化することで「今、自分たちがどの辺にいるのか」といったことが見えてくるはずです。難しいのは、遅過ぎても早過ぎてもうまくいかないことです。時宜を得た新規事業を立ち上げるためには、多くの情報をインプットし、広く世界の潮流に通じておく必要があります。
2. 自社にフィットしているか
もう一つ大事な視点が、自社への適合度合いを見極めること、つまりその仮説と自社との相性についてじっくり検証することです。
類似した事業を同様のタイミングで始めたのに、結果が異なる、ということがあります。原因は一概にはいえませんが、例えば以下のようなことがハードルになっているのかもしれません。
- BtoBからBtoCへの参入(またはその逆)
- マネタイズ(収益化)手法の変更
- まったくの異分野への参入
この中で最もハードルが高いのは、マネタイズ手法を変えることだと思われます。マネタイズ手法というのは組織に深く根づいたものですから、まずは同じマネタイズ手法を使って新規事業に取り組む道を模索する方がリスクは低いでしょう。
つまり、自社の強みや特色を新規事業でも生かせるかどうかは重要な検討事項です。あとの2点についても確かにハードルは高いかもしれませんが、自社の優位性を転用できるのであれば、挑戦する価値は十分にあります。
最強フレームワーク活用のススメ
1. 新規事業は一文で説明できる
海外事例にさまざまなヒントがあることはよくわかった、それを検証に値する仮説へと精度を高める大切さも十分理解できた。しかし、どうすれば膨大な情報の中から原石を見つけ、磨き上げることができるのか。正直、時間もノウハウもない、そう頭を抱える新規事業担当者もいるのではないでしょうか。
しかし、心配はいりません。世界中の海外事例を、たった一文で大量にインプットとアウトプットできるのが、今ご覧になっている「説ログ」サービスです。ここでは、すでに成果が出始めている海外の新規事業アイデアを、以下のようなフレームワーク(構文)によって簡潔に紹介しています。
業務・行為・財
は、
現状の方法
よりも、
の方が、
〇〇性が高い
説。
とてもシンプルですが、これでほとんどの事例は説明が可能です。ビジネスのトレンドを把握するためには、これで十分に目的を果たすことができるでしょう。
2. 「両利きの経営」へ
昨今、ビジネスの世界で「両利きの経営」というキーワードをよく聞くようになりました。これは、同名ビジネス書のベストセラーから流行した言葉ですが、両利きとは「知の探索」と「知の深化」を指し、端的にいえば既存事業の改善活動(深化)だけでなく、新しい事業を生み出していく必要がある(探索)ということを説いています。
同書に寄せられた賛辞の中で、ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クレイテンセン教授は、以下のように述べています。
「成熟企業にとっての永遠の難題は何か。中核事業を維持しながら、同時にイノベーションを起こし、新たな成長を追求していくことである」
本稿の冒頭で「企業にとって新規事業は永遠のテーマ」と書きましたが、クレイテンセン教授は、「永遠の難題」という表現を使っています。それほどに新規事業は容易でないことを痛感させられますが、逆にいえば両利きの経営ができている企業ほどイノベーションが起きやすく、パフォーマンスが高くなる傾向にあるという経営学の実証研究も多いようです。
両利きの経営には、今後めざすべき一つの理想像がわかりやすく示されているのかもしれません。混迷の時代を生き抜くため、それぞれの企業が思い描く未来のカタチを実現するため、ぜひこの「説ログ」を活用していただければと思います。
レポートダウンロード
「徹底解説 あなたが知らない 新規事業の真実」
より詳しく知りたい、上記の記事のまとめてほしい、といったお声に応え、基本的な考え方から新規事業の立ち上げまでの概要をまとめたレポートをご用意致しました。
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