事業企画(仮説)は、一文で表現可能
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【思いつかなくてOK】新規事業が思いつかない時の対処法

作成日: 21/05/10 07:28
更新日: 21/05/10 07:28

この記事で伝えたい事

新規事業アイデア・企画は、ゼロから自分で考えるよりも、海外の成功事例を参照し、それに自分らしいスパイスを加えて考える方が、効率的に良いものが生み出せる

新規事業開発のステップを最もシンプルな形で表現すると、①事業アイデアを出して、②それを実行・具現化する、という2ステップとなります。ベンチャー起業において、「アイデア」よりも「実行」の方が遥かに重要であるという話があります。実際には、初期のアイデアのまま突き進むケースは稀であり、器用な人は事業アイデアの軸足を少しずつ動かしていきます(ピヴォットと呼ばれます)。

したがって、アイデア段階であれこれと思い悩むよりも、早く実行してマーケットの反応を見ながら柔軟にピヴォットしていく方が、成功への近道だ、ということになります。この考え方は、スタートアップ起業家の中では、常識的な事業開発のステップです。

「起業家流」は大企業で通用するか?

大企業向けに新規事業開発の進め方を教えるセミナー講師の中には、先に挙げた起業家流の事業開発アプローチをお手本として推奨する人もいるでしょう。確かに手法論としては私も正しいと思います。文化として、起業家流がフィットする会社もあるかもしれませんが、私は尽くそれで痛い目に合ってきました。

成熟した大企業で新規事業を進める場合、状況に合わせてコロコロと柔軟に事業アイデアをピヴォットすることは、現実的には実施困難です。企業によっては、事業アイデアに多少変更を加えるだけでも、逐一ステークホルダー(経営層や株主、関連部門など)に説明する必要性が生まれたりします。大企業に「スタートアップ流」の事業開発を推奨する人は、おそらくこの現実に直面したことがないか、企業文化を一瞬で変革する裏技をもっているのでしょう。

特に最近では、デジタル系の新規事業を実現したい企業も多いと思います。この場合は、事業開発部門とマネジメント層だけではなく、開発チームとのコミュニケーションも発生します。システム開発のディレクションやコーディングを、自社のシステム部門や外部の開発ベンダーに依頼している場合、ちょっとした要件の変更を加えるのも現実的にはハレーションを生んだりします。彼らに仕様変更を伝えると、「ちゃんと要件を固めてから教えて下さい」「今回で仕様変更する本当に、本当に、最後ですよ!」「こんな状況が続くなら、もう対応できません!」といったフィードバックが入ることでしょう。そして、彼らの主張はある意味では正しいのです(納期に遅れや、バグがあると怒られるので)。

スタートアップ起業家と、大企業の新規事業担当者では、置かれている状況が根本的に違います。スタートアップ起業家流の事業開発手法は、日本的な大企業文化において殆どの場合通用しないだろう、というのが私の見解です。この手法がうまくハマるのは、これまで数多の新規事業に挑戦してきた会社だけではないか、と私は思っています。

「柔軟な動きができいない!これだから、うちの会社はダメなんだ」と文句をいっても、企業文化は簡単には変わりません。新規事業担当者がこの圧倒的な現実にどう向き合うべきか、順を追って考えていきましょう。

この記事を書いている人(自己紹介)

はじめまして、片倉健です(略して「カタケン」と呼ばれることが多いです)。私は大学を卒業後、新卒でアクセンチュアという外資系コンサルティング会社に就職し、同社の戦略コンサルタントとしてキャリアをスタートしました。その後、ビジネス書籍の要約サイト「Flier(フライヤー)」の共同創業者として起業家の道に進みました。同社を退職後、大企業向けのコンサルタント経験と起業家の経験を掛け合わせて、「成熟した大組織で新規事業を立ち上げる方法」の研究をスタートしました。それから約7年間、複数のクライアント(レガシー日本企業)に深く関与し、数多くの新規事業の立ち上げを試みました。成熟した大企業で新規事業を立ち上げる際に、現実問題として一体何が起こるのか、その問題を解決するために何をしたのか、この経験から得た知見を共有していきたいと思っています。

「やってみなはれ」は直ぐに終わる

大企業文化の中で新規事業を推進するには、冒頭説明した「柔軟性(ピヴォット)」を放棄する必要性があります。非常に勇気のいることですが、もちろん完全に諦めるという意味ではありません。大企業において、起業家ほどの柔軟さは期待できない、という意味です。

この場合、冒頭に書いた「アイデアよりも、実行が大事」という話が必ずしも正しくないという結論になります。というのも、この主張は「組織の意思決定にかなりの柔軟性があること」が前提となっているためです。その柔軟性を失うということなので、「アイデアよりも実行が大事」ではなく、「アイデアも実行も、同程度に大事」というように、その前提条件を捉え直す必要があります。柔軟に後から変更すること(ピヴォット)を諦めるため、初期段階で本当に意味のある新規事業アイデアなのかを見極める必要性が高まります。

気軽に「とりあえずやってみなはれ!」という言葉を使う経営者は多いのですが、いざ始めてみると「早く成果を出せ」「成果が出ないなら早くやめろ」「まだ赤字を出すのか!?」に変化します。この急激な温度変化には、本当に驚かされます。新規事業担当者としては、「言ってることと違うじゃないか!」「はしご外しだ!」と感じるのですが、まさにその通り、言っていること現実は違います。最初から「どうせこうなる」という覚悟を持っておいたほうが、そのショックは小さいでしょう。淡い期待は見事に裏切られます。ハシゴは簡単に外されます。

この現実に立ち向かうためには、新規事業アイデアの精度が命となります。新規事業アイデアの質を高めるためには、何よりも数を出すことが重要です。2,3個の新規事業アイデアを出して、それに全てを賭けるのは非常にリスキーです。まずは、たたき台となる新規事業アイデアの種をたくさん作って、筋がよさそうなモノについて絞り込み・議論を重ねる手順を踏みましょう。

先に優れた新規事業アイデアの条件について解説すると、

① ある程度の事業規模になることが期待でき、

② 自社の優位性が活き、

③ 技術的に実現できるもの、

となります。「これは、検証する価値のある新規事業アイデアだ」というものを絞り込み、その新規事業アイデアが本当かどうか検証するステップに繋げていきます。

海外事例を活用して新規事業アイデア・企画・ネタを量産する

「新規事業アイデアを量産しろ!と言われても、現実的には2,3個しか出せないよ!」と思う人が多いでしょう。新規事業アイデアは、自分の経験、知識からしか生まれません。思考に何の補助線も引かなければ、ポンポンと新規事業アイデアを出せなくても当然のことだと思います。

突然、何の脈絡もなく「そうだ!家畜にウェアラブルデバイスを付けて、体調管理をすれば、畜産業の管理業務の負荷を下げることができるのではないか?」という新規事業アイデアが湧いてくる人はいないでしょう。人間の脳は、何らかの問いや情報インプットを行うことによって、アイデアを出力します。

ここで、私が考案した新規事業アイデアの発想方法をご紹介したいと思います。非常にシンプルな方法なのですが、以下のステップとなります。巷では「タイムマシン経営」と呼ばれたりします。

① 海外で既に成果を上げているベンチャー企業のビジネスアイデアをインプットし、面白いものを直感的に選定する

② 日本で類似のことができないか?同じ概念を他のテーマに応用できないか?自社のリソースを使って、もっと効率的に実現できないか?という問いを自分に与える

③ 新しい新規事業アイデアとして出力する

このステップを踏むことによって、普段思いつかないような新規事業アイデアをアウトプットすることができます。家畜の飼育について考えてもこなかった人が、先ほどの家畜のウェアラブルデバイスの事例を知っただけで、「自分の会社の技術でできるのでは?」「家畜ではなく、養殖魚に対しても同じことができないかな?」という思考を巡らせることができるようになります。

新規事業アイデアは一文でインプット・アウトプットする

ここで、インプットとアウトプットを効率的に実施するためのフレームワークを紹介したいと思います。このフレームワーク(下図)を用いれば、あらゆる新規事業アイデアは、たったの一文で表現することができます。

フレームワークは、「(主語:財またはプロセス)は、(既存の方法)よりも、(新しい方法)の方が、(生産性などが高い)説。」という文章構造となります。このフレームワークの詳細な解説は以下の記事で行っていますので、是非そちらをご参照ください。

参考記事

【最強フレームワーク】新規事業・DXアイデアの考え方

例えば、先ほどのアイデアを説のフレームワークに当てはめてみましょう。

家畜の体調管理は、飼育員が手作業で管理するよりも、家畜に取り付けたウェアラブルデバイスから情報を取得し、データに基づいてAIと飼育員が共同で管理する方が、業務効率性が高い説。

このように、新規事業アイデアをたった一文で表現することができます。

私は、このフレームワークに沿って事業アイデアを大量に紹介するサービスを運営しています。「説」を大量にログとして掲載しているので、サービス名は「説ログ(https://setulog.com/)」と言います。無料会員登録で、優れた事業アイデアをたくさん閲覧することができますので、是非活用してみください。

海外事例の説をインプットした後は、先ほどご説明した通り、「日本で類似のことができないか?」「同じ概念を他のテーマに応用できないか?」「自社のリソースを使って、もっと効率的に実現できないか?」という問いを与えて、自分なりの言葉で説としてアウトプットしてみましょう。もし強く共感できるのであれば、海外の先行事例の完全な模倣でもいいと思います。

ありがたいことに、世界中でスタートアップ起業家たちが未知なる新規事業アイデアを検証してくれています。彼らの新規事業アイデアのネタは、尽きることはありません。テクノロジーの進歩が止まり、世の中が完全に最適化されない限り、今後もずっと新規事業アイデアは出てくるでしょう。

アイデア発想に自信がない人でも、それらの新規事業アイデアをインプットし続けることで、常に優れた新しいアイデアを生むことができます。説の大量インプットによって、「新規事業が思いつかない」という課題は払しょくすることができるでしょう。是非、「説ログ(https://setulog.com/)」を使って効果を実感してみてください。

※受付後、メールにてご回答致します。

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